乳酸菌の種類と効果・効能

プロバイオティクス先進国の日本では数多くの乳酸菌・ビフィズス菌がプロバイオティクス(生きた菌による良い効果)として用いられています。

近年では殺菌済みの菌や菌によって産生される物質をウリにするバイオジェニックスも数多く登場してきています。

当サイトでご紹介しているだけでも数十種類の善玉菌があります。(乳酸菌・ビフィズス菌以外も含んでいますが)

この記事ではその中でも比較的知名度の高い菌注目すべき菌を効果ごとにまとめました。

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乳酸菌・ビフィズス菌の定義

乳酸菌の定義・特徴

乳酸菌とは乳酸をたくさん作り出す細菌を意味していて、慣用的な呼び名であり、生物分類学上の呼び名ではありません。

  • 消費したブドウ糖に対し、50%以上の乳酸を産生する
  • 形は桿状の「桿菌」または「球菌」
  • 運動性はない(まれに若い細胞では動くものもある)
  • ビタミンBのうちナイアシンを必要とする

乳酸菌は酸素があっても生きられる通性嫌気性のものが多く、ヒトのからだの口の中から生殖器至るまでいろいろな場所に常在している細菌です。

ビフィズス菌の定義・特徴

乳酸菌とビフィズス菌の違い

ビフィズス菌はかつてはLactbacillus bifidusと呼ばれ、乳酸菌の仲間として扱われていましたが、ビフィズス菌は、

  • 乳酸の産生量が50%に満たないこと
  • 産生する物質が乳酸と酢酸であること

このような違いから現在は乳酸菌とは違う分類がなされています。

ビフィズス菌は偏性嫌気性菌(酸素があると生育できない)の細菌で、ヒトの場合は酸素のない小腸下部から大腸にかけて常在しています。

大腸のもっとも主要な善玉菌で、通常は成人の腸内フローラの20%を占めています。

一方、大腸における乳酸菌の量はビフィズス菌の100分の一以下であり、数量的には圧倒的にビフィズス菌のほうが多くなっています。

乳酸菌・ビフィズス菌の効果と種類

プロバイオティクスバイオジェニックスとして用いられる菌はスーパーに売っているヨーグルトに入っているものだけでも数十種類はあると思われます。

乳酸菌・ビフィズス菌の持つよく知られている効果と、代表的な菌をまとめてみます。

整腸作用(便秘の予防・解消)

プロバイオティクスのもっともポピュラーな作用は整腸作用です。

善玉菌によってビフィズス菌を増やして悪玉菌を抑制し、腸内フローラ(腸内の細菌)のバランスを改善することによって整腸作用がもたらされます。

おなかの調子をととのえる”という効果から特定保健用食品機能性表示食品の関与成分(その効果をもたらす成分)になっている乳酸菌・ビフィズス菌もたくさんあります。

私達の腸内には1000兆もの細菌が住んでいるといいます。腸内細菌は一種の生態系を作り出しており、菌のお花畑に例えられて腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼ばれます。

腸内フローラは非常に多くの酵素を作り出し、ヒトに対して生理機能、免疫、老化、発ガン、感染などに大きな影響を及ぼしています。

また、腸は第二の脳とも言われ、気分や感情に大きく影響を及ぼします(脳腸相関)。

したがって、腸内フローラを健全に保つことが、健康な肉体・精神を維持することににつながります。

整腸作用をもつ乳酸菌・ビフィズス菌の例

当サイトで紹介しているほとんどの乳酸菌・ビフィズス菌には整腸作用の研究成果がありますが、特に知名度の高いものをあげてみます。

L・カゼイ・シロタ株

特定保健用食品の関与成分にもなっている乳酸菌。ヤクルトでおなじみ。知名度が高い。ヒト由来。

ビフィズス菌BB536菌

日本で初めてヨーグルトに使われたビフィズス菌。ビヒダスに含まれる。特定保健用食品の関与成分にもなっており、世界各国にも輸出されている。ヒト由来。

LGG乳酸菌

世界でもっとも研究の盛んな乳酸菌。乳酸菌として初めて特定保健用食品の関与成分になった菌。ヒト由来。

ビフィズス菌Bifix

生きて腸まで届くだけでなく、腸で増殖することも期待できる菌。機能性表示食品の関与成分にもなっている。

ビフィズス菌BE80

ダノンが世界に展開するビフィズス菌。高い生存率で腸に到達することができる。機能性表示食品の関与成分になっている。

ガセリ菌CP-23株

自立神経を介して脳に働きかけ、腸の働きを正常にする

LB81菌

ブルガリア菌2038株サーモフィラス菌1131株を併せてLB81菌と呼んでいる。トクホの関与成分にもなっている

クレモリス菌FC株

カスピ海ヨーグルトを作るための菌。菌体外多糖(EPS)を作り出すことが特徴。

ビフィズス菌Bb-12

特定保健用食品の関与成分になっているビフィズス菌。非常に多くの臨床研究が行われている。

整腸作用のある代表的な菌だけをあげてみましたが、こちらのページでは他の菌もご紹介しています。

免疫力強化作用・感染症の予防

乳酸菌・ビフィズス菌の免疫力強化作用もよく知られた機能で、免疫力をあげる食べ物といえばヨーグルトをあげる方も多いかと思います。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)などの免疫細胞が活性化されれば、インフルエンザなどの感染症の予防やガン予防にもつながります。

免疫力強化作用をもつ乳酸菌・ビフィズス菌の例

菌体自体が直接免疫細胞に作用したり、あるいは乳酸菌が作り出した物質が免疫を細胞を活性化させたりと、そのメカニズムは菌株によって異なります。

免疫細胞を活性化させる効果のある代表的な菌は次のような菌になります。

R-1乳酸菌

菌が作り出した菌体外多糖(EPS)に免疫力をあげる作用があり、小・中学生を対象にした実験ではインフルエンザの感染率を下げるというデータが得られた。

ラブレ菌

ラブレ菌も小・中学生を対象とした規模の大きい実験を行っており、インフルエンザの感染率を下げた。

プラズマ乳酸菌

プラズマサイトイド樹状細胞という免疫細胞を活性化させることにより、哺乳類の免疫力を総合的にあげることが期待される。

シールド乳酸菌

2016年にブレークした乳酸菌。NK細胞を活性化することを期待できる。

乳酸菌L-137

『なれずし』から発見された乳酸菌。免疫力向上が期待できる。

免疫力を上げる作用をもつ菌も数多く見つかっています、こちらのページでは他の菌も紹介しています。

ガンの予防

  • 腸内フローラを改善して悪玉菌の産生する有害物質を減少させること
  • 乳酸菌・ビフィズス菌によってNK細胞などの免疫細胞を活性化する
  • 菌体に有害物質を吸着して大概に排出する

このような善玉菌の効果によりガン予防が期待できます。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)などの免疫細胞が活性化されれば、インフルエンザなどの感染症の予防やガン予防にもつながりますね。

ガン予防が期待できる乳酸菌・ビフィズス菌の例

菌体自体が直接免疫細胞に作用したり、あるいは乳酸菌が作り出した物質が免疫を細胞を活性化させたりと、そのメカニズムは菌株によって異なります。

免疫細胞を活性化させる効果のある代表的な菌は次のような菌になります。

L・カゼイ・シロタ株

特定保健用食品の関与成分にもなっている乳酸菌。ヤクルトでおなじみ。知名度が高い。ヒト由来。
有害物質を減少させる効果も確認されている。

ビフィズス菌BB536菌

日本で初めてヨーグルトに使われたビフィズス菌。ビヒダスに含まれる。特定保健用食品の関与成分にもなっており、世界各国にも輸出されている。ヒト由来。
大腸に棲むETBF菌という悪玉菌を抑制してくれる

ビフィズス菌LKM512

一般的なビフィズス菌に比べて、桁違いの生存率で腸に到達し、増殖。ポリアミンというアンチエイジング作用のある物質を大腸で作り出してくれる。
ポリアミンにはDNAを修復作用が期待できる。

ガンに関する研究成果をもつ菌は数多く見つかっています。こちらのページでは他の菌も紹介しています。

免疫調整機能(抗アレルギー作用)

免疫力強化機能をもった菌の多くは、同時に免疫調整機能ももっていることが多いです。

善玉菌によってTh1細胞を活性化させ、Th2細胞を抑制することで免疫のバランスが正常な状態に近づき、花粉症アトピーといったアレルギー症状が改善されると考えられています。

抗アレルギーを目的に選ばれた菌

多くの研究をしてみた結果、抗アレルギー作用があることが判明した菌もあれば、はじめから抗アレルギー作用のための菌として選びぬかれた菌もあるわけです。免疫バランスの調整作用などアレルギーに関する効果が強調されているのは次のような菌になります。

リフレクト乳酸菌

日清食品が研究する乳酸菌。花粉症やハウスダストなどが原因の通年性鼻炎に3~4週間という比較的短い期間で効果を発揮する。

L-92乳酸菌

カルピス社が抗アレルギー作用のために選び抜いたアシドフィルス菌L-92株。L-92を摂取したアトピーの子どもたちの90%に症状緩和の有効性が示されたというデータもある。

L.プランタルム YIT0132

ヤクルト社によって開発され乳酸菌。マクロファージなどの免疫細胞が産生し、乱れた免疫バランスを改善するインターロイキン-10(IL-10)の産生誘導能が高いことが特徴。

KW乳酸菌(KW3100株)

KW3110株はTh1サイトカインの誘導活性が高く、Th2サイトカインの抑制する活性が高いことが特徴で、免疫細胞のバランスを整えることによりアレルギー症状の改善が期待できる。

抗アレルギーが確認されている菌の例

ビフィズス菌BB536

BB536株を毎日20億個以上、14週間食べ続ける実験を行ったところ、特に目と鼻のかゆみが改善された。またこの実験ではスギ花粉による花粉症の原因となるIgE抗体の値が下がった。

LGG乳酸菌

妊娠中にLGG乳酸菌を摂取した母親から生まれた幼児は、摂取しなかった母親から 生まれた幼児と比較すると、LGG乳酸菌を摂取しなかった母親から生まれた子供のグループのアトピー性皮膚炎の発症率は46%、LGG乳酸菌を摂取した母 親から生まれた子供のグループのアトピー性皮膚炎の発症率は23%となり、LGG乳酸菌を摂取した場合にはアトピー性皮膚炎発症率が半減しました。

L-55乳酸菌

マウスの花粉症やアトピーの症状が緩和された。

こちらのページではアレルギー症状改善作用のある他の菌も紹介しています。

内臓脂肪の低減作用

腸内環境を改善してビフィズス菌を増やして、クロストリジウムなどのファーミキューテス属の菌を減らせば太りにくい体質になるということは最近よく話題になりますね。

抗肥満作用やメタボリック症候群などの予防効果などを期待できる菌もあります。CP1563株は脂肪の低減に関して「機能性表示食品制度」の関与成分になりました。

ガセリ菌SP株は2018年には『内臓脂肪を減らす』という効果から特定保健用食品の関与成分にもなりました。

ビフィズス菌B-3は腸内フローラと肥満の関係に着目して発見されたビフィズス菌です。

ガセリ菌SP株

内蔵脂肪を低減する効果がある。ヒトの腸管への定着性が非常に高いことも特徴。

CP1563株

脂肪燃焼を促進する核内受容体PPARaを活性化する能力が高い菌

ビフィズス菌B-3

腸内フローラと肥満の関係に着目して発見されたビフィズス菌

コレステロール値低減作用

コレステロール値を低減させる菌も見つかっています。

コレステロール低減作用を持つ菌の例

ビフィズス菌BB536株

コレステロール低減作用も期待できる

LGG乳酸菌

世界でもっとも研究の盛んな乳酸菌。マウスを使った実験ではコレステロール値の低下作用も確認されいる

こちらのページではコレステロール低減作用のある他の菌も紹介しています。

お口のなかの健康

プロバイオティクスのなかには口の中で効果を発揮するものをあり、虫歯の原因となるミュータンス菌や歯周病の原因となるジンジバリス菌を抑制するものもあります。

細菌ではL8020乳酸菌が某テレビ番組で紹介され、一気に知名度があがりましたね。

口のなかで効果を発揮するプロバイオティクスの例

ロイテリ菌プロデンティス

バイオガイア社のロイテリ菌プロデンティスは歯周病菌を抑制することが期待される

L8020乳酸菌

口内の虫歯菌・歯周病菌・カンジダ菌を抑制することができる乳酸菌

LS1菌(TI2711菌)

歯周病の原因菌であるプレボテラ・インターメディア菌を殺菌・抑制する

こちらのページではお口の健康にかかわる他の菌も紹介しています。

抗ストレス作用・睡眠の質を改善

腸と脳が密接に関わりあっていることは経験的に昔からよく知られていたことですね。(脳腸相関)

胃腸の機能を改善すればストレスも和らぎますね。

善玉菌の中にはストレス軽減作用や睡眠の質の改善を期待できるものもあります。

抗ストレス作用・睡眠の質を改善する作用のある菌の例

ビフィズス菌B.ビフィダムY株

ヤクルト社によって「胃」で活躍するために開発されたビフィズス菌。胃の機能を回復、ストレス軽減、ピロリ菌抑制作用など、他のビフィズス菌とは一線を画す効果を期待できる。

プレミアガセリ菌CP2305株

殺菌済みの菌でも、整腸作用と抗ストレス作用、睡眠の質の改善の効果が確認されたガセリ菌。バイオジェニックス。

ピロリ菌抑制作用

炎症を引き起こし、胃がんの原因となるピロリ菌を抑制する作用もプロバイオティクスの定番の作用となっていますね。

ピロリ菌を抑制するプロバイオティクスの例

乳酸菌LG21株

ピロリ菌対策で定番の乳酸菌LG21株。ピロリ菌の数を10分の1に減らしてくれるというデータもある。

ロイテリ菌プロデンティス

お口の健康だけでなく様々な効果が期待できる。ピロリ菌抑制も期待できる。

アンチエイジング・寿命伸長作用

免疫力を強化し、感染症やガンを抑制すれば寿命の伸長が期待できます。

アンチエイジング作用のある物質を腸内で作り出してくれるものもあります。

  • ラットの寿命が伸びたる
  • 毛並みのいい状態が長く保たれる

ラットを使って哺乳類を寿命を伸ばす効果が確認されています。

アンチエイジング・寿命伸長作用ある善玉菌の例

プラズマ乳酸菌

善玉菌の中で唯一「プラズマサイトイド樹状細胞」を活性化でき、哺乳類の免疫力を総合的に強化することを期待できる。

ビフィズス菌LKM512

一般的なビフィズス菌に比べて、桁違いの生存率で腸に到達し、増殖。ポリアミンというアンチエイジング作用のある物質を大腸で作り出してくれる。

乳酸菌・ビフィズス菌はどのくらい摂取すれば効果が期待できるのか?

人の腸内フローラには数百兆~1000兆個もの腸内細菌が生息しています。

これに影響を及ぼすには大量の乳酸菌を腸へと送り込まなければならないような気がしますね。

しかし、菌によっては1日あたり数億~100億個程度でも整腸作用をもたらすことが確認されています。

医薬品部外品特定保健用食品機能性表示食品などの「消費者庁のお墨付き」あるいは「しっかりとした科学的根拠」のある製品で見てみましょう。

一度に大量に送り込みたいならバイオジェニックスな乳酸菌

大量に乳酸菌を送り込みたいなら、

などが適しています。

これらの菌は加熱殺菌された菌ですが、菌体自体に効果を期待することのできるバイオジェニックスです。

最近登場したばかりのリフレクト乳酸菌も一日あたり数千億個の菌数を摂取することができます。

菌を摂取すべきタイミングは?

プロバイオティクスとして開発されて多くの菌は胃酸などに耐えて腸まで到達する強い生命力をもっています。→生きたまま腸に届く菌

このような菌の生存率をさらにあげたい場合には、一般的に『胃酸の薄まった食後』がもっともよいタイミングと言われています。

一方、菌体自体あるいは菌の作り出した物質に良い効果が期待できるバイオジェニックス乳酸菌の場合には摂取すべきタイミングをあまり気にする必要はないかもしれません。

オススメの乳酸菌・ビフィズス菌はどれか?

非常に多くの菌が出回っています。実際に自分で全部試すのは大変ですね。

  • 特定保健用食品の関与成分になっている
  • 研究が盛んである
  • その菌を含む製品が手に入りやすい

このような観点から、私のオススメする乳酸菌は、

です。

ビフィズス菌のオススメは、

です。

腸内環境は人それぞれ異なるので菌との相性があることもあると思います。

実際に食べて試してみましょう。