アシドフィルス菌
乳酸桿菌(ラクトバチルス)に分類されるアシドフィルスはヒトのお口、腸内、生殖器など様々な場所に常在している菌で、酸性や酸素に強いことが特徴です。
アシドフィルス菌は昔からプロバイオティクス(生きた菌による良い効果)として発酵乳やサプリメントなどに利用されてきました。
アシドフィルス菌を含む代表的な”おクスリ”としては、指定医薬部外品に分類される新ビオフェルミンS錠などがあります。
市販されているヨーグルト(発酵乳)としては、オハヨー乳業社のL-55株乳酸菌を含む製品が比較手に入手しやすいですね。
バイオジェニックス(菌体や菌の産生物質による良い効果)的な効果が期待できるアシドフィルス菌としてはL-92株が代表的です。
アシドフィルス菌とビフィズス菌とビオチン
ビオチンはビタミンBの一種で、肌や髪や爪などの健康にも関わる成分です。
アシドフィルス菌は増殖する際にビオチンを消費しないタイプの乳酸菌なので、ビオチン療法にとってはとても相性の良い乳酸菌とされています。(※乳酸菌ではありませんが酪酸菌の一種である宮入菌もビオチンを消費しないので同様に好まれて用いられるようです。)
ほとんどの乳酸菌が増殖する際にビオチンを必要とするなか、アシドフィルス菌、ラクトバチルス・デルブルッキー、ラクトバチルス・サブスピーシーズ・ラクティスなどの一部の乳酸菌は増殖する際にビオチンを必要としないのです。
一方、人にとってとても重要であると考えられている善玉菌のビフィズス菌は増殖する際に一般的にビオチンを必要とします。
しかしながら、ビフィズス菌ビフィダムはビオチンを産生したりするなど、ビフィズス菌がビタミンB群を産生することも知られています。
つまり、
ビフィズス菌は一般的に増殖する際にビオチンを必要とするが、ビフィズス菌のなかにはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、ニコチン酸などのビタミンB群の産生するものもある。
(※ビタミンを合成する能力はビフィズス菌の種類や株によって異なる。)
というわけなのです。
アシドフィルス菌や酪酸菌を摂取してビオチン療法を行っている方にとっても、ビフィズス菌は基本的に好ましい菌であるのではないでしょうか。
アシドフィルス菌の主な効果
整腸作用
アシドフィルス菌のもっとも基本的な効果は、やはり整腸作用です。
アシドフィルス菌は酸性や酸素に強いので生きたまま腸に到達するものが多いです。
アシドフィルス菌は乳酸を作り出し、腸内を酸性のpHを酸性に傾け、腸内環境の腐敗させ有害物質を産生するウェルシュ菌などの悪玉菌の増殖を抑制して腸内環境を改善するなどの働きが期待できます。(悪玉菌は酸性の環境を嫌います。)
免疫に関する効果
免疫調整機能
アシドフィルス菌の「株」によっては免疫細胞のTh1細胞とTh2細胞のバランスを調整し、花粉症・アトピーといったアレルギー症状の予防や症状軽減の効果が期待できるものもあります。
また、悪玉菌が多くなった腸ではTh2細胞が優位に働くことがあります。
腸内環境を改善してビフィズス菌などの善玉菌を増やし、悪玉菌を抑制することもアレルギー症状の改善につながると考えられています。
免疫力強化
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化するアシドフィルス菌も見つかっています。
NK細胞は細菌やウイルスに感染した細胞や健康なヒトでも毎日3000〜6000個はできてしまうというガン細胞などを退治します。
ピロリ菌対策
アシドフィルス菌LA-5やアシドフィルス菌FK-205にはピロリ菌を抑制する効果があるという報告があります。
※すべてのアシドフィルス菌にピロリ菌を抑制する研究成果があるというわけではありません。
ピロリ菌に対する研究成果のある善玉菌はこちら→
アシドフィルス菌はカンジダに対する効果があるのか?
カンジダ菌(日和見菌として人のカラダの至るところに存在する真菌の一種)に対して、乳酸菌が効くという情報はよく知られています。
※日和見菌(ひよりみきん)とは普段はおとなしくしているが、免疫力の下がったときなどに悪い働きをする菌のことを指します。
乳酸菌によってカンジダを抑制するアプローチとしては、次の3つがあると思われます。
- 善玉菌(ビフィズス菌・乳酸菌など)を優勢にすることによって、カンジダ(日和見菌)を劣勢にする
- 免疫力を高める作用のある乳酸菌を摂取して免疫力を高めることにより、カンジダを抑制する
- 乳酸菌の作り出した抗真菌物質によってカンジダを抑制する
上の「1」、「2」に関する効果はあくまで”一般的な乳酸菌・ビフィズス菌の効果”であり、アシドフィルス菌だけが持つ効果ではありません。
「3」の効果に関してはロイテリンという抗菌物質を作るロイテリ菌などの乳酸菌のほうが得意であろうと思われます。
多くのプロバイオティクスには具体的な研究成果が公表されていますが、研究成果に「カンジダを抑制する」といったものが見受けられるのはラムノーサス菌の一種であるL8020菌です。
L8020乳酸菌は口内のカンジダ菌を抑制する効果が確認されています。
日本で市販されている代表的なサプリメントやヨーグルトに含まれるアシドフィルス菌のうちで『カンジダ抑制に関する効果』が公表されているものは私の調べた限りでは見つけることはできませんでした。
アシドフィルス菌の効果的な摂取方法
プロバイオティクスやバイオジェニックス(菌体や菌の産生物質による良い効果)の効果は良くも悪くもマイルドなことが特徴です。
免疫力効果アップ・ピロリ菌対策などの効果を得るには数週間に渡って、継続的に善玉菌を摂取する必要があります。
アシドフィルス菌の副作用
プロバイオティクス・バイオジェニックスには基本的に副作用はありません。
ただし、人の腸内フローラに影響を及ぼすものですので、体質に合わない場合もあるかもしれません。
代表的なアシドフィルス菌の種類
L-92株
L-92株はカルピス社によって、抗アレルギー作用を目的に選びぬかれた菌です。
免疫調整作用や免疫強化といった効果が確認されています。
効果は殺菌済みの菌でも変わらないバイオジェニックスの菌です。
L-55株
L-55株はヒト由来のアシドフィルス菌です。
酸性に対して強い耐性が有り、胃酸などにたえて生きたまま腸に到達することができます。
腸管への定着性が高く、整腸作用が期待できます。
整腸作用以外にもアレルギー症状に関する研究がなされています。
KS-13株
アシドフィルスKS-13菌は小腸に定着して、乳酸を多く作り出し、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善します。
このページではこれまでに当サイトでレビューした市販されているアシドフィルス菌入りのヨーグルトなどをアシドフィルス菌の種類ごとにまとめました。