乳酸菌シロタ株

乳酸菌L.シロタ株

シロタ株は京都帝国大学の代田稔博士(後のヤクルト創始者)が1930年に強化培養に成功した『人腸』乳酸菌(ヒト由来の乳酸菌)です。

シロタ株入りの製品はその五年後の1935年に商品化されました。

シロタ株の正式な名称は『L.カゼイ YIT 9029』です。

長い歴史を持ち、非常に研究の盛んなプロバイオティクスであり、現在では多くの効果が確認されています。

シロタ株に関する研究はまだまだ続いているようで、近年シロタ株はその研究の場を宇宙空間(国際宇宙ステーション)にまで広げました。(閉鎖微小重力環境下におけるプロバイオティクスの継続摂取による免疫機能及び腸内環境に及ぼす影響に対する研究)

世界でも利用される信頼の乳酸菌

現在ではシロタ株を含んだ多くの製品がその整腸作用から特定保健用食品の表示許可を得ています。

シロタ株は日本国内だけでなく世界でもプロバイオティクスとして活躍しています。

シロタ株はラクトバチルス・カゼイ菌に属する菌で、胃酸、胆汁に耐えて生きたまま腸に到達することのできる菌です。

シロタ株には有害物質を菌体に吸着するなどの「菌体自体」にも有用な効果が期待できるバイオジェニックス(菌体や菌の作り出した物資による良い効果)的な要素も持ち合わせている菌です。

CMなどでは『シロタ株が生きたまま腸に届く』ということが強調されていたりしますが、死んでしまったシロタ株にも様々な効果が期待できるわけです。

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シロタ株を200億個以上含むNewヤクルト

シロタ株の効果はあくまで『研究成果』であり、シロタ株を含む製品の効果・効能ではありません。

※特定保健用食品の製品には整腸作用があるという”お墨付き”があります。

シロタ株が活躍する場所(部位)

シロタ株は栄養分の消化・吸収が行われる主に小腸で働くとのことです。

  • 腸内環境を改善し、ビフィズス菌を増やす効果(ビフィズス菌は小腸下部から大腸に住んでいる善玉菌)
  • 大腸ガンの予防効果

このような研究成果もあることからシロタ株は小腸だけではなく、もちろん大腸にも良い効果があると思われす。

シロタ株の効果・効能

シロタ株は他のプロバイオティクスに比べて、多くの研究成果が報告されています。

整腸作用

シロタ株を1日100億個以上、4週間にわたって摂取したところ、腸内のビフィズス菌が3倍に増えた一方、大腸菌は5分の1まで減りました。

  • 腸のぜん動運動が活発になる
  • 生きたまま腸内に到達し、腸内のpHを産生に傾けて悪玉菌を抑制する

シロタ株のこのような効果によって腸内環境が改善され、便の回数や便の質が改善されることが期待できます。

便秘の改善も期待できます。

シロタ株の整腸作用は消費者庁のお墨付きの

シロタ株は『おなかの調子を整える』という保健効果から特定保健用食品の関与成分になっています。その科学的根拠は次のようなものになります。

  • シロタ株が乳酸を産生することによって腸内環境を酸性に傾け、悪玉菌を抑制する作用
  • 腸の運動を高めて便性を改善する
  • 菌体の表面に有害物質を吸着する作用
  • 便の質の改善
  • 悪玉菌抑制によって有害物質の産生を抑制し、腸内腐敗を防ぐ作用
  • 免疫力を維持し体の抵抗力を強める作用

ストレス軽減の軽減

 ヤクルト1000の継続飲用により、一時的な精神的ストレスがかかる状況でのストレスをやわらげる機能が確認されています。 唾液中のコルチゾール濃度(ストレスを受けたときに増えるホルモン物質)の上昇が抑制されました。 ストレス体感が抑制されました。

睡眠の質の向上

ヤクルト1000の継続飲用により、一時的な精神的ストレスがかかる状況での睡眠の質を高める機能が確認されています。 熟眠時間と熟眠度が増加しました。 起床時の眠気を示すスコアで改善が認められました。

小児急性下痢予防

インドで1~5歳の3758名の小児を対象にした実験ではシロタ株を飲んだグループは、飲まなかったグループに比べて下痢発症率が14%低減しました。

NK細胞強化(免疫力強化)

乳酸菌シロタ株はマクロファージにインターロイキン12を作らせる作用の強い菌です。

インターロイキン12によってNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が刺激され、免疫力が高まります。

ナチュラルキラー細胞はウイルスや細菌に感染した細胞や、がん細胞を退治する、とても重要な免疫細胞です。

喫煙者に対する免疫力強化作用

NK活性が下がりやすい喫煙習慣のあるヒトがシロタ株を摂取し続けると、66%(50人中33人)のヒトのNK活性が回復しました。

高齢者に対する免疫力強化作用

高齢者10人(69〜97歳)にシロタ株発酵乳製品を昼食後に1本、3週間飲んでもらった実ところ、

シロタ株発酵乳製品を飲んだ人たちのほとんどはNK細胞の活性が高くなりました。

  • NK活性が低い人には活性化を上昇
  • 高い人に対してはNK活性を維持する

という効果が確認されました。

一方、シロタ株発行乳製品を飲まなかった人たちのほとんどはNK活性が低下しました。

NK活性が低下した原因としては、被験者は試験期間中病院に滞在しなければならず、そのことがストレスとなり、NK活性の低下したと考えられます。

腸管バリア機能の強化

2型糖尿病患者を、シロタ株を400億個を含むプロバイオティクス飲料を継続して摂取するグループと、摂取しないグループに無作為に分け、16週間の経過観察を行った実験では、

シロタ株を摂取したブループの便中の「ラクトバチルス カゼイ」、「クロストリジウム コッコイデス」といった有用菌が有意に増加し、さらには腸内から血液中に移行した菌数が有意に低下しました。

シロタ株の継続摂取が、2型糖尿病患者の腸内フローラに変化を与え、腸内細菌の血中への漏れ出しを抑制することが明らかになりました。

風邪の予防

シロタ株を含む乳酸菌飲料の継続飲用が激しい運動を行うスポーツ選手の上気道感染症(いわゆる風邪)の発症リスクを低減することがわかりました。

その効果の一つはIgA抗体量が良好な状態に保たれたことに起因すると考えられます。

インフルエンザ感染症対策

マウスにシロタ株を経鼻投与すると鼻腔内のインフルエンザウイルスの減少および生存率の有為な増加が確認されました。

シロタ株の投与により、呼吸器粘膜免疫組織の一つである縦隔リンパ組織のインターロイキン12およびインターフェロンγ産生が増加したことから、呼吸器粘膜の自然免疫の増強がインフルエンザ感染を防御したと推測されています。

また、老齢マウスにシロタ株を経口投与し、呼吸器粘膜増強作用およびインフルエンザ感染防御作用を調べました。

その結果、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性化および鼻咽頭関連免疫細胞の活性化が認められ、鼻腔内のインフルエンザウイルス数の減少が見られました。

インフルA型ウイルスに強い効き目

加熱処理したシロタ株DK128型を鼻の中に投与したマウスに対し、致死量のインフルエンザA型ウイルスを感染させたところ、DK128型を投与しなかったマウスは感染後8日~9日までに体重が減少し、すべて死亡したのに対し、シロタ株を与えたマウスは1匹も死亡しませんでした。

さらに、A型ウイルスの亜型である「A香港型(H3N2亜型)」と「Aソ連型(H1N1亜型)」も感染させましたが、すべて生き延びました。

抗変異原性

焼き肉や魚の「お焦げ」を食べると変異原性(=遺伝情報に異常を起こしてガンの原因などになる物質)が上昇しますが、

シロタ株を含む発酵乳は焼き肉摂取による健康成人の尿の中の変異原性物質の上昇を抑制しました。

大腸がん予防

普通のヒトに比べて4〜7倍も大腸ガンになりやすいという、大腸腫瘍(腺腫あるいは早期がん)が2個以上見つかった40〜65歳まで男女398人(試験開始時までにそれらすべてを摘除・完治)に協力してもらい、次の4つのグループにわけて実験を行いました。うち380人が試験を完遂しました。

  • Aグループ:
    食事指導+小麦ふすまビスケット(99人)
  • Bグループ:
    食事指導+Lカゼイ・シロタ株(99人)
  • Cグループ:
    食事指導+小麦ふすまビスケット+L.カゼイ・シロタ株(103人)
  • Dグループ:
    食事指導(97人)

実験の結果、L.カゼイ・シロタ株を投与したグループでは、腺腫発生が投与しないグループに比べて若干少なくなりました。

また、この試験では発生した菌種の異型度(正常細胞と比べてどれだけ形状が異なっているかを示す指標には軽度異型、中等度異型、高度異型の3段階(異型度が高くなるとガンに近づく)があり、これについても調べています。

中等度以上の異型度を持った腺腫の発生を調べたところ、シロタ株を投与したヒトの相対危険度は2年目20%のリスク低減、4年目では35%のリスク低減することが確認されました。

乳がん予防

日本国内の医療機関から、(1)40〜55歳の女性(2)初期ガンで術後1年以内の306名を選定しました。また、これらの人たちと年齢や居住地域が似通った健康な662名を対照群としました。

両方のグループに小学校高学年や20歳頃、10〜15年前それぞれにおける発酵乳や大豆(味噌汁、豆腐、納豆を含む6品目)の摂取状況について聞き取り調査をしました。

また、食生活(アルコール摂取状況を含む)、運動、病歴、家族病歴などについては各自調査票に記入してもらいました。

シロタ株を週4回以上摂取していた人の割合は、前者グループでは11.1%、後者グループでは16.2%でした。オッズ比を求めたところ、シロタ株を含む乳製品の摂取頻度が週4回以上では0.65となり、

シロタ株を含む乳製品の習慣的な摂取が乳がん発症リスクを35%低減する結果となりました。

また、大豆イソフラボンの摂取量が多いほど乳がんの発症リスクが低下することがわかりました。

シロタ株と大豆イソフラボンの両方を摂取することによって、さらに乳がんの発症リスクを下げることができると考えられます。

乳がんリスクを低減させるシロタ株の作用メカニズム

  • 腸内環境を改善させ、悪玉菌を減少させて有害物質の生成を減少させる効果
  • 腸内の発がん物質を吸着して、排出させる効果(抗変異原性)
  • がん細胞を退治するNK細胞の活性化
  • がん細胞の増殖を促す物質の産生を抑える効果

などが関わっていると考えられます。

膀胱がんの予防

内視鏡を使って表在性膀胱がんを切除した125名を次のようにグループわけして、実験を行いました。

サブグループA:初発でかつ多発がん

  • シロタ株生菌製服用剤を飲んだグループ
  • シロタ株生菌製服用剤を飲まなかったグループ

サブグループB:再発しかつ単発がん

  • シロタ株生菌製服用剤を飲んだグループ
  • シロタ株生菌製服用剤を飲まなかったグループ

サブグループC:再発し、かつ他発がん

  • シロタ株生菌製服用剤を飲んだグループ
  • シロタ株生菌製服用剤を飲まなかったグループ

膀胱がんの再発を調べていく中でグループCでは多くの人に再発が認められました。

そのためグループCを除いて、シロタ株の効果を調べました。

その結果、シロタ株を飲んだグループの1年後の再発率は20.8%、飲まなかったグループの再発率は45.1%となり、乳酸菌シロタ株の表在性膀胱がんの再発抑制効果があることが確認されました。

また、試験中に表在性膀胱がんが再発した人の中で、試験前に切除したものとがんの悪性度を比較しました。(悪性度が高くなるほど治療しにくく、転移や再発しやすくなります。)

  シロタ株服用グループ プラセボ服用群
悪化 1名 7名
変化なし 20名 22名
改善

10名

2名

シロタ株には再発ガンの悪性度進展を抑える効果があることが明らかとなりました。

アレルギー症状軽減

免疫細胞のTh1細胞とTh2細胞のバランスが崩れ、Th2細胞が過剰に多くなったときにアレルギー症状を発症することがあります。

シロタ株はTh1細胞を活性化し、Th1細胞とTh2細胞のバランスを整える働きがあります。

花粉症に対する効果

日本とイギリスで行われた花粉症のヒトを対象にした実験ではシロタ株が花粉症に有効であることが示されました。

O-157の増殖を防ぐ

動物を使った実験ではシロタ株を摂取すると腸管に定着する0-157が約100分の1にまで減少しました。

またO-157が生成するベロ毒素の濃度も大幅に減少しました。

ノロウイルス感染性胃腸炎の症状軽減

長期滞在型の高齢者向けの保健施設で、77人の高齢者(平均84歳)を対象に1ヶ月間実験が行われました。

シロタ株を飲んだグループと飲まなかったグループにはノロウイルス胃腸炎の発生率に関しては有意な差はありませんでしたが、ノロウイルス胃腸炎による37度を超える平均発熱期間はシロタ株を飲んだグループのほうが短くなりました。

シロタ株を飲んだグループはシロタ株の飲用によってビフィズス菌とラクトバチルスの両方が有意に優勢になり、腸内フローラの不均衡が是正されることによってノロウイルス胃腸炎の発熱の軽減に寄与したと考えられます

また感染性胃腸炎に関連するおう吐物による誤嚥性肺炎などの合併症抑制にも有効であると期待されます。

血圧降下作用

シロタ株の加熱抽出された細胞壁多糖画分(多糖-ペプチドグリカン複合体)には血圧降下作用があることが確認されていました。

さらに65歳以上から93再の高齢者352名(男性125名、女性227名)を対象にした実験で、シロタ株を含む乳製品の週3回以上の習慣的摂取は高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されました。

抗炎症作用

シロタ株の産生する多糖体(EPS)には抗炎症作用があります。

ピロリ菌のマウスへの定着性や試験官の中での増殖を減少

シロタ株はピロリ菌に感染させたマウスへのピロリ菌の定着能を減少させます。

in vitro(=試験官の中)での実験ではシロタ株はピロリ菌の増殖を抑制しました。

シロタ株にもピロリ菌に感染したヒトへの効果もあるかもしれませんが、ピロリ菌対策にはピロリ菌を抑制する研究成果が豊富な菌のほうがよいかもしれませんね。

同じヤクルト社の保有する菌ではビフィズス菌B.ビフィダム Y株にピロリ菌抑制に関する研究があります。

ピロリ菌を抑制する菌一覧はこちら→

シロタ株の効果的な摂取方法

摂取するタイミング

シロタ株は生きたまま腸に届く生命力を持った菌です。しかし、生きたまま腸に到達できる菌だとしても胃酸などの影響で死んでしまうものもあり、すべての菌が小腸・大腸まで到達するわけではありません。

そこで、腸への到達率をあげるため、一般的にプロバイオティクスを摂取するタイミングは『食後の胃酸が薄まったタイミング』で摂取することが推奨されていたりします。

シロタ株も食後に摂取すると、生きたまま腸に到達する割合をあげることができるかもしれません。

継続して摂取したほうが良い

プロバイオティクス効果がマイルドであることが特徴です。シロタ株も摂取してすぐに劇的な効果を発揮するわけではありません。

また、シロタ株が生きて腸に届いても他のプロバイオティクスと同様、一度摂取したからといって腸にずっと定着してくれるわけではありません。

シロタ株も毎日コツコツ摂取することが望ましいです。

シロタ株の多い商品・オススメは?

もっとも代表的なシロタ株入りの製品である『Newヤクルト』には200億個のシロタ株が含まれています。

ちなみに2013年の菌数アップ前はヤクルトのシロタ株の菌数は150億個でした。

シロタ株が配合されたサプリメントとしては『ヤクルトBL整腸薬S錠』が販売されています。

(※このページで紹介したシロタ株の効果はあくまで『研究成果』であり、シロタ株を含む製品の効果ではありません。)

シロタ株が10億個前後の商品

  • ソフール 元気ヨーグルト→シロタ株6億個以上
  • ジョア (食べるタイプ)→シロタ株9億個以上
  • ソフール→シロタ株10億個以上
  • ジョア→シロタ株12.5億個以上

ソフール10億個以上という比較的少ない菌数でも、シロタ株の整腸作用から特定保健用食品の表示許可を取得しています。

シロタ株は10億個程度で整腸作用が期待できるということですね。

シロタ株100~200億個以上の商品

プレティオにはシロタ株が100億個以上含まれています

次の3つの製品はいずれも200億個以上のシロタ株が含まれています。

  • Newヤクルト
  • Newヤクルトカロリーハーフ
  • ヤクルト ゴールド(販売中止?)

シロタ株300億個以上

  • ヤクルト Ace(生産終了)
  • 毎日飲むヤクルト
  • ヤクルト ソイ α(アルファ)
  • シンバイオティクス ヤクルト w
  • ヤクルト ファイブ

シロタ株400億個以上

  • ヤクルト400
  • ヤクルト400LT

シロタ株1000億個以上

  • ヤクルト1000

オススメのシロタ株入りの商品はどれか?

私がオススメするのは300億個以上のシロタ株を含むプレミアムなヤクルトである『シンバイオティクス ヤクルト W』です。

シロタ株の菌数に関してはシロタ株を400億個含む「ヤクルト400」には及びませんが、シンバイオティクス ヤクルト Wはガラクトオリゴ糖を2.5gも含んでいます。

ガラクトオリゴ糖は人の消化酵素などで分解されにくく、大腸に到達してビフィズス菌などの善玉菌のエサになります。

このような食品をプレバイオティクスと呼びます。

シンバイオティクス ヤクルト Wはプロバイオティクス(生きた菌による良い効果)、プレバイオティクスの両方の要素を兼ね備えたシンバイオティクスな製品なのです。

菌概要

他の菌の効果を見る

菌の効果は研究成果であり、菌を含む製品の効果・効能ではありません。

※医薬品、医薬部外品、特定保健用食品などの一部の製品には善玉菌による整腸作用などの保健効果がある製品があります。